おやぢの想い出

「流星ワゴン」を観ていて、父親のことを思い出した。

私がまだ小学校低学年の頃であったと思う。雨が降って来たので駅まで傘を持って迎えに来て欲しい、というような電話があったのだろう。母親に言われて、私は家から歩いて10分足らずのところにある地下鉄の駅まで父を迎えに行った。

どこかで一杯ひっかけて来た父は機嫌が良く「何か買ってやろう」と言って、帰り道の酒屋(いろいろ売ってる今で言うコンビニ風だったと思う)に寄った.

私は前から目をつけていた、店頭にある「キャラクターの描いてある脚のついたグラス」が欲しいと頼んだ。良く覚えていないがバヤリースの景品で、おぼろげながら、虎のキャラクターが描かれていたように記憶している。

ここからは少し演出が入ってしまうが・・

父「兄ちゃん、息子がなんや絵の書いたコップが欲しい言うとるんやけど、あれもらえるか?」

店員「店頭のグラスはバヤリース6本に1個ついてくるという景品ですので、バヤリース6本お買い上げいただくと1個差し上げます」

父「あ、そうか、わかった。ほんなら替わりにダルマ(サントリーオールド、当時、高級品で2000円くらいはしたと思う)1本もらうわ、そっちの方が全然値段高いし、それでええやろ」

店員「いえ、それはできません。バヤリース6本に1個ついてくるという景品です」

父「あ、そうか、わかった。ダルマ2本もらうわ、それでええやろ、息子がほしがっとるんや、やったってくれるか?」

店員「いえ、それはできません。あくまでバヤリースの景品ですから」

父「そうか、わかった。お前んとこではもう2度と買い物せんから、帰る」と、ぷいと店を出てしまった。

私は父を怒らせてしまったと、すごく悪く思ったのだが、その後、父は私に対して「もらえんかってすまんな、またどっかで見つけたら買うたるからな、すまんかったなあ」と謝ったのだ。私はさらに「無理言って悪いことしたなあ」と感じていた。

ここからがちょっと面白い。

家に帰ってしばらくすると、さっきの酒屋のおばさんと思われる人物が血相を変えて我が家を訪ねて来た.

「先程は息子が失礼なことを言いましたようで申し訳ありません。強くしかっておきましたので、今後とも〇〇酒店をご贔屓にどうぞよろしくお願いします。」とサントリーオールド2本とキャラクター付きのグラス2個を差し出したのだ。

父はドヤ顔で「無理言うてすまんなあ、うちの息子がどうしても欲しいて言うもんやから、おおちゃく(横着)に育ててしもてなあ」って、

横着なんはおやぢやろ。

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